■広い範囲に生息しているするエビで、基本的に年中捕獲できます。
地域的な差は大いにありますが、春先から釣れ出し、梅雨にハイシーズンを迎えます。6月、7月にはたくさん釣れるので、100尾釣れた・・・なんてのもザラです。
主に河川の河口の塩分と淡水が混ざっている汽水域や、中流域に多く生息していますが、陸封された湖沼など、完全な淡水域にも生息しています。

■テナガエビといっても種類がたくさんです。
陸水産テナガ類は、スジエビ属5種テナガエビ属15種計20種が生息しており、未確認種もいるそうです。
沖縄では19種ものテナガが生息し、九州以北の7種と比べると圧倒的に多いのです。さすがは琉球!ですね。

有名なのは「テナガエビ」 「ヒラテテナガエビ」 「ミナミテナガエビ」 「コンジンテナガエビ」です。
この中でも良く釣られるのは「テナガエビ」「ヒラテテナガエビ」で、水産上は4種全てが多く利用されています。

■居酒屋で『川エビの唐揚げ』というメニューを見掛けますが、川エビとはテナガエビを指すことが多いのをご存知でしたか?
知らぬ間にテナガを食べているという方が多いのです。
ただし、それは冷凍の輸入物であることがほとんどなので、日本産のテナガとなると、やはり食されていない方が圧倒的に多いのではないでしょうか。
その味の差は天地の差。ぜひ天然のテナガを食べてみて下さい。
テナガのシーズンになると、自分で釣ってお店で出しているという方もいらっしゃるようです。

▼このページは以下のメニューでお届けします。

テナガ釣りの魅力
テナガエビはカッコイイ!
テナガエビは何を食べる?
食事は巣穴で
行動と生息場所
寿命
産卵
成長
脱皮の秘密
交尾〜オスの努力!〜
西表島の巨大テナガエビ
タイでも人気のテナガエビ
テナガエビの減少と増加
■テナガエビの魅力は、釣って楽しく、食べておいしいこと。そして何よりお手軽に釣ることができる、ということでしょう。

ザリガニ釣りのように手釣りや棒切れで釣ることもできますが、釣ることを本当に楽しむとなると、柔軟な竿と単純な仕掛けで釣ることが大事です。
仕掛けも工夫することで良く釣れるようになります。
敷居が低いのに、突き詰めると奥が深い・・・・これがテナガ釣り最大の魅力と言えるかもしれません。

それほど大型ではないテナガでも竿は絞り込まれ、意外な引きを堪能できます。初めて釣る方は「これがエビの引きなの?」と驚かれることでしょう。
『釣りキチ三平』でいうところの【小さなビッグゲーム】といったところでしょうか。

多摩川や江戸川なんかで釣れたエビなんて食べられるの?

よく聞かれる質問ですが、疑問を持った方は一度食べてみて下さい。ほとんどの人がその香ばしい味にビックリするはずです。
そしてまたきっと食べたくなることでしょう。

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テナガエビの魅力は『釣って楽しく食べておいしい』ことですが、それ以前に見た目がカッコイイ!ということが挙げられるでしょう。
いかにも子供が好きそうな形状をしたテナガエビは、ザリガニやカブトムシにも似たカッコよさ、楽しさが凝縮されています。

お子さんのいらっしゃる方は、ぜひご一緒に釣行してみて下さい。
大型のテナガを釣れば、あっという間にヒーローです。

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テナガエビは雑食ですが、動物性の食べ物が大好きです。
自然界では、小魚、魚の死骸、仲間や他のエビ、ミミズなどを食べていますが、藻類も食べます。
飼育下では、茹でたホウレン草、金魚の餌、亀の餌、ザリガニの餌などを与えても問題ありませんが、メダカなどの活き餌を与えると、テナガの優秀なハンター振りを観察することができて面白いです。

釣りの場合は赤虫やサシ、ミミズ、ソーセージ、魚の切り身、イカの刺身などで釣れます。
この中でも赤虫、サシ、ミミズで釣るのが最適で、釣果が上がります。
攻撃性が強いエビなので、共食いも頻繁に起きます。つまり、究極は釣ったテナガの身で釣ることも可能です。
エサが切れたときの最終手段です。

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テナガエビは、エサを手頃な場所・・・テトラの隙間や岩陰などの巣穴に持ち帰ってからゆっくりと食べる習性があります。
巣穴といっても、自然下では日々争いがあり、中型、小型の巣穴は安定していません。
15〜20cmくらいの大型になると、力強いので安定した巣穴というものがあります。周囲のテナガを蹴散らす姿を観察すると面白いですよ。

大型は足でしっかりと踏ん張って抵抗するので、なかなか巣穴からから出てこないことがあります。管理人は引っ張りすぎて長い腕だけ釣れてしまったことが何度もあります。
予想以上に強い力なので、魚に負けない引きを味わえます。

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【行動】
テナガエビは明るい場所が苦手なので基本的に夜行性です。しかし日中でも物陰、日陰になっている場所では問題なく釣れます。
特に曇りの日で、ジメジメと暑い日は『テナガ日和』なので爆釣します。ハイシーズン中は日中でもガンガン釣れます。

昼間は物陰でじっとしていることが多く、それほど行動的ではありませんが、それでもシーズン中は明るいに中でも姿をたくさん見ることもできますし、よく釣れます。
夕方〜夜になると更に行動が活発になり、エサを求めて動き回ります。

【生息場所】
画像のような障害物のある場所を好んで生息しています。
テトラポッドの隙間や、陰になっている場所、水中に沈んだ障害物、水草の陰など隠れる場所があれば、どこにでも生息しています。ただし水質が著しく悪化した場所では見掛けることができません。

水中を泳ぐ姿も見られるので、行動範囲はかなり広いものと推測できます。


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固体による強さ、環境による個体差にもよりますが、1年〜3年間くらい生きます。
20cm級のテナガエビは2、3年生きているもので、オスのテナガエビのほうが長生きするようです。

飼育下ではあっという間に死んでしまうこともあれば、長期に渡って生きることもあります。


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5月〜7月くらいにかけて、交尾をして抱卵、そして産卵をします。
個体差はありますが、シーズン中に3回くらい産卵をするらしく、繁殖が頻繁に行われます。


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産卵すると、ゾエアと呼ばれる稚エビが誕生します。
このゾエアは親エビとは全く似ていない姿をしていて、まるでエイリアンです。
ゾエアは川の流れに乗って、塩度の濃い汽水域、または海まで行き、そこである程度の大きさまで成長します。
ゾエアは植物性プランクトンなどを食べます。

その後、川を遡上しながら脱皮を繰り返して成長し、テナガエビの形になって、やがて親エビと同じ環境で生活します。通常、この期間は1ヶ月くらいです。


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テナガエビは脱皮を繰り返して成長しますが、その脱皮には3つのパターンがあります。

1・成長の為の脱皮
大きくなる為には絶対に必要な作業ですが、個体によって脱皮回数は違います。
また脱皮後に自分の抜け殻を食べることがよくありますが、この行為はカルシウムなどの栄養補給だと考えられています。
1回の脱皮による体の増大量は、エビの種類、年齢、生息環境によって異なりますが、10〜50%の増量がみられるようです。

2・再生の為の脱皮
病気や共食いが原因で、体の一部が欠損した場合などに、その再生を目的とした脱皮をします。
ケガの状況や個体差はありますが、2〜3回の脱皮でほとんど再生が完了します。片腕だけ小さいテナガを見ることがありますが、欠損した腕が後から再生され成長している為です。

3・産卵脱皮
成熟したメスのテナガエビのみに見られる脱皮で、3cm以下の小さいメスには、ほとんど見られません。
卵巣が成熟してくると食べる量が減り、脱皮日とその前日はほとんど食べなくなります。
その後5〜10分、早いと数十秒で脱皮をして、交尾に移ります。この脱皮の理由は、抱卵を効果的にする為の形態変化だということです。


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交尾が行われるのは、メスが脱皮して殻もまだ柔らかく、匍匐(ほふく)行動も十分にできない15〜16時間以内です。
脱皮後のテナガはブヨブヨしており、非常に軟弱です。この時に共食いがよく発生します。

脱皮した瞬間にガバっと襲われたテナガを観察したことがありますが、冷酷、残酷というよりも、生き抜く為には見事としか言いようのない光景でした。

6〜12時間以内の交尾が最も確実に受精ができ、20時間以上経過した場合の交尾は失敗に終わるようです

【オスの努力!】
オスは脱皮しそうなメスを見つけると、左右の第二胸脚、つまり一番目立つあの長い手を大きく広げて、触覚を振りながら近寄ります。
そして第一胸脚(短い手)で脱皮を促すような行動を続けますが、この時に他のオスが近付くと威嚇して追っ払います。
これは他のメスが近付いてきても、同様に威嚇します。

オスの守りで脱皮を無事に終えたメスに対してオスは更に優しくなり、常に保護行動を取るようになります。
この現象は、脱皮後にメスがホルモンを分泌してオスを大人しくさせている・・・という説もあるようです。

そして数時間後に交尾をしますが、交尾時間は2〜3秒と早期決着型。
オスがメスを見つけてから、交尾が終わるまでの時間は5〜10分くらいなので、オスの努力の結果が、たったの2〜3秒で終わってしまうのです。


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豊かな自然を残し、神秘の島として名高い沖縄の西表島には、なんと200gにも成長するミナミテナガエビが多く生息します。
ミナミほど大型ではありませんが、コンジンテナガエビも生息します。地元の家庭料理や、鬼殻焼きなどにして食べられるようです。
「ミナミテナガエビ」は四万十川にも多く生息し、漁も盛んに行われています。


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タイでは60cm以上にも成長する大型のオニテナガエビの養殖が盛んで、飲食店では水槽に入れた状態で売り、その場で炭火で焼いて出してくれます。
トムヤムクンに入っているエビの多くがこのオニテナガエビです。

またタイなどではオニテナガの『釣り堀』があり、釣り上げたものをその場でフライなどにして食べることができます。現地ではメジャーな遊びでもあり、若者のデートコースでもあるようです。
観光客も多く楽しむので、重要な産業の1つとなっています。


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仁淀川で漁師をしている方の1人は、テナガ減少の原因をこう説明しています。

「終戦間もなく、その毒性が表面化する前に使用されたDDTやBHCといった農薬を使い始めたころから、テナガエビが減り、見られなくなった」

DDTもBHCも1971年には販売も中止となり、その後使用も禁止となった為、生息数が回復しました。
これはテナガに限らず、他の魚種にも当てはまることでしょう。
しかしその後も多摩川のような河川での高度成長期による水質汚染が引き続き行われていた場所では、その数を減らしていました。

近年になり、これらの問題も解決されつつあり、多摩川などは鮎が戻ってくるくらいに水質が回復しています。当然テナガの数も無数に増えました。
ただエビには当たり年と外れ年というものがあり、やたらと数が多い年もあれば、かなり減少する年もあります。


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