夜の海

見てはいけない物を見てしまう...。
聞いてはいけない物を聞いてしまう...。


皆さんも一度はそんな経験が有るのではないでしょうか?
それが、理屈の付けられる物ならイイのですが...。

僕は平日でもたまに一人で夜釣りに行きます。
勿論会社が終わってからなので釣り場に付くのはPM9:00頃です。
状況にもよるのですが大体AM2:00〜3:00位までやってます。

釣り場は工業地帯や大きな倉庫等がある所なので夜は人が全然居ません。
平日だとやはり釣り人も少なく、いつも行く所は多い時でも3〜4人位で、AM1:00位を過ぎると自分一人だけという事も多々あります。
柵を乗り越えて(本当はいけないのですが)水辺までいく事もあるので釣り人以外はまず遭う事はないんです。
波の音とたまに近くを走るトラックの音位しか聞こえません。

深夜の東京ベイエリア。
静かに波の音を聞きながら大好きな釣りに没頭する...。

こんな風に書くとなんだか町中の喧噪から離れ、このひと時だけは何も考えずに竿を振る...。
何とも癒されるひと時な感がありありなのですが、実は時々そうでも無い事があるのです。

夜の海というのは何とも不気味なんです。明るい所は明るいのですが、よく行く所は結構暗く、月明かりと近くの首都高の明かり位しか有りません。
当然の事ながら暗いので海面も黒く見えますし、なにより暗いので水深がよくわからないのが不気味です。
たまに釣りをしててこんな事が有ります。

フッと誰かの視線を感じる事が有るんです。しかも海の中から...。

海面は真っ黒なんですが、誰かが見てる気がするんです...。ものすごく...。
特に回りに他の釣り人が居なく自分一人の時によく有るんです。
勿論気のせいだと思うのですが、1度や2度ではないんです。
また、こんな事も有ります。

何か女の人の歌の様な物が聞こえるんです。勿論周りには誰もいないんですが...。

自分はいわゆる『霊感』と言う物はゼロに等しいので『見えてしまう』と言う事はないのですが、よく夜釣りをする人の間ではこの様な類いの話はあるんです。

遠くで首から上が海面に浮いててこちらを見てる...。

とか

海の中から呼ぶ声が聞こえる...。

とか...。


昔釣り船をやってる船長に聞いた事が有るのですが、毎日海に出てると何度か、浮いてるいわゆる『ドザエモン』を見る事が有るそうです。
自殺者なのか、事件性の有る物なのか...。
どちらにしろ『見なかった事』にしてやり過ごすらしいです。
警察に通報すると事情聴収などで半日位拘束されて仕事にならないからだそうです。

自分の釣り仲間も利根川で釣りの最中に発見した時は、半日位警察に付き合わされたそうです。
結構東京湾には漂てる事が多いみたいです。

根がかりかな?と思って引っ張ったらゆっくり黒いゴミ袋が浮いてきてその中には...。

とか結構聞く話なので自分は根がかりして『引っ張ってゆっくり寄って来る』場合は迷わず糸切っちゃいます。怖いから。


水辺には霊が集まるって言いますからそういう事も有るのかもしれませんね...。
それでも自分は何故か一人で夜釣りに行ってしまいます。


釣りが好きだから?
癒されるから?


いや、
もしかしたら呼ばれているのかも知れません...。



いつか僕を真っ暗な海に引きずり込む為に...。

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